LSM(Licensed Scrum Master)更新しました。

■はじめに

認定資格の取得から6月で2年が立ちます。失効まであと1週間ほどだったので、題名の通り更新しました。
(今はライセンス規約で1年で失効するように変更が加わりました)
ただこの認定資格はお金さえ払えば誰でも取れる資格なので、これを取ること自体にはあまり意味はありません。

今回youtubeでの話題にもしようと思っているのですが、ネタ作りのためにも改めて認定資格を取る意義について考えてみようと思います。

■(結論)認定資格を取る個人的な意義

下記で詳しく説明しますが、知識の柱を持っておきたかったからです。
これが正しいスクラムの理解なんだよ、これが本来のルールなんだよ、を知らないと現場で自分が悩んだ時に自分を信じる拠り所がなくなってしまいます。

ここから先は補足情報として見てください。

■そもそもなぜLSMなの?

恐らく世間一般で最も認知されているスクラムマスター認定試験は、世界的に見てもScrumAllianceが主宰するCertified ScrumMasterだと思います。

www.scrumalliance.org
その上であえてScrum.inc主宰のLSMを取ったのは以下の2点からです。

①LSMの方が安かったから

まず1点目はこれです。何とも下世話な話で恐縮ですがw

今はたまに20万円あたりで受けられることがあるようなのですが、ボクは受けようか悩んでいた当時、ScrumAllianceの認定試験は30万円しました。
元々スクララムマスターとプロダクトオーナーとを受けるつもりだったのですが、2認定で60万円はそう易々と払えません。

60万円あれば、下手をするとScrum.incなら認定資格が3認定取れます。
と言ってもその当時は2認定資格しかなかったのですが、プロダクトオーナーを取得して程なくスクラムを複数にスケールするための認定資格としてScrum@Scaleという認定資格ができました。こちらも20万です。

結果的にはLSMとLSPOを選択したことによって60万円で3つ目の認定資格であるScrum@Scaleも取ることができました。
10万円の差額はやはり大きい。。

②Scrum.incが主宰していること

スクラムの生みの親はJeff Sutherland博士です。
(1993年に初めて実施、95年のOOPSLA'95で正式発表)
スクラム唯一の公式ガイドブックであるスクラムガイドはこの方とKen Schwaber氏が共同執筆しています。
そしてJeff Sutherland博士が創業したのがScrum.incです。


これは比較的いろんなところで聞く話ですが、ScrumAllianceの認定資格の講師には派閥があるようで、受ける人によってかなり内容が異なるそうです。
Scrum.incの認定資格で同席させて頂いた方にも「前回ScrumAlliance受けたけど、その時の講師は誰々で、Ji(ぴー:とあるツール名)とかクソだぜ!って言ってましたよw」と伺いました。


ボクが認定資格を受ける際に重要視したポイントは基準は何なの?という点です。
それまでボクは独学でアジャイルスクラム関連の書籍を読み、覚えたことを現場で実践しながら知識として蓄積してきたのですが、それが本当に正しいかどうかその時のボクは正直わかりませんでした。
そんな中、ただでさえスクラムは亜流や我流が巷に氾濫していて、それが絶対に悪いとは思わないのですが土台を知るための守破離の「守」を覚えるのに、人によって言ってることが変わる物は避けたかったわけです。
(ScrumAllianceはKen Schwaber氏が設立したものの2009年に理事会と仲違いして辞めたあと、自身でScrum.orgという組織を立ち上げています)

www.scrum.org


権威主義的かもしれませんが、1993年にスクラムを開発・実践し、唯一の公式ガイドであるスクラムガイドを執筆している方が作った認定試験が、ボクの中では一番正解に近いんじゃないかな、という判断でした。
(ちなみにScrum.orgは日本では認定資格が受けられない)

■じゃあお勧めする?

ご紹介するにあたり懸念点が2つあります。

①世間に認知されていない

まずScrum.incの認定試験は2017年に新設された比較的若い認定資格です。
しかもライセンスの発行が新設当初は日本でのみの限定的な物(パイロット版)でした。

資格というのは世間一般に普及・認知されないと資格としての効果を発揮しません。
Scrum.incの認定試験はちょっとまだ弱いかな、という印象です。
ですので、ボクは自分の判断でこの認定資格を取りましたが、認定資格としては他の人にはScrumAllianceをお勧めしたりしています。


(補足)
2019年よりライセンスの取り扱いがScrum.incのもと、全世界的に共通の扱いになりました。
www.licensedscrum.com

世界でも認定を受けた方がどんどん増えていようです。
www.licensedscrum.com



②Sutherland博士が高齢

確か80歳を超えているはずです。
Scrum.incという組織は、Jeff Sutherland博士にかなり依存している部分があります。
(組織の紹介ページでは枕詞のようにJeffがJeffが、と書かれています)
そういうボクも博士が作ったから、博士が運営してるから、と言った理由で取得したわけですがあまり考えたくないものの、そう遠くない未来には博士の存在しないScrum.incとなるわけです。
この時にこの認定資格の価値がどうなるのか、正直ボクには判断がつきません。

アジャイルスクラム開発が必然となる世の中へ

昨年のScrum Interaction 2019にボクも参加してきたのですが、そのセッションで博士がこう述べています。

今日における米国国防総省のプロジェクトは、すべてアジャイルで行うことが法的に義務付けられている

atlassian-teambook.jp

これの意味するところは、アジャイルスクラム開発での経験値、実績がないとそもそも仕事が取れない世界がくるかもしれないことを示唆しています。
このムーブメントは米国だけのことでしょうか。
いや、そんなわけないです。

下記のスライドがアニュアルサーベイに言及していますが、世界では2010年の段階でウォーターフォールアジャイルの比率が逆転しているそうです。
また2019年時点ではアジャイル手法の65%をスクラムが占めています。

www.slideshare.net

アジャイルスクラムの運営には圧倒的に経験が必要です。
どんなに良質な書籍を読んで、良質な授業を受けても、生の現場に対応するのは難しいです。
故にスクラムガイドでも理解が容易、習得は困難と書かれています。

やらないと習得できない、習得できないとやりたくてもできない世界がくるかもしれません。


ではでは。

(おまけ)
昨年のScrum InteractionでSutherland博士にお願いして一緒に写って頂いた写真。
f:id:theboyalex:20200528014233j:plain